ダウン症をおもちのお子さん・Yちゃんのお母さんであり
心理士である奈々絵さん。
Yちゃんと週に1回の個別レッスンを受けてくださってました。
「シェルハブメソッド、どうですか?」
レッスンを通しての変化をうかがいました。
前後編でお届けします。
「遊び方・関わり方を知りたかった」
みかさ:奈々絵さんは心理士としての専門性をお持ちじゃないですか。
その上で、お子さんにシェルハブメソッドを受けさせたいと思ってくれた。
心理士さんとしての客観的な感想、親としてシェルハブメソッドを受けてみた
率直なところ、両面からお話を伺いたいと思ってます。
シェルハブメソッドのレッスンを週1で受けてくださっていて、
Yちゃんの発育についても、私はとても楽しい経験だったので、
いろんな人にお伝えしたいし、参考にさせていただけたら。
奈々絵:そんな参考になるか、わからないですが……。
1~2年前の私を振り返ると、本当に育児が楽しくなった。
それが一番だなって。楽しくなったし、前向きになれた。
みかささんに出会ったころ本当に、どう育てたらいいのか、
この子にどう向き合えばいいのか、揺らいでた時期だったんですよね。
それを後押ししてもらった。その後押しも「大丈夫だよ」っていう、
前向きになれるものだったなって思います。
みかさ:嬉しい結論が先に来た。
奈々絵:ダウン症を持っている子って特に、生まれてすぐから関わっていくこと、
すごく大事だと思うんですよね。
でもその情報源が本当になくて、関わりたいけど、どうすればいいのか……と。
いま思えば、普通の育児と変わらないですよね。
みかさ:変わらないですね。
奈々絵:ただゆっくりなだけなんだけれど、そこにエッセンスが必要っていうか。
育児していく流れとかは一緒なんだけど、
もうちょっと関わってあげた方が子どもにも、ママにもいいんだなと。
で、その関わり方が、私にとってはシェルハブメソッドがよかったなって。
その関わり方って誰に聞いてもわからないんですよね。
「関わりたいんだけどどう関わったらいいですか」とか聞いても、
「いやまだ早いよ」っていう言葉しか返ってこなかったんですよね。
みかさ:よく聞きますね、それ。
奈々絵:病院でYは2か月からリハビリ受けてたんですけど。
作業療法士さんはやっぱり、ダウン症については専門的な感じじゃないし、
首が座るにはどうしたらいいかとか、ポジショニングの話ばかりだったので、
そういうことじゃなくて、遊びとか関わり方を聞きたいと思って。
みかさ:作業療法士さんが考えてる「首が座ったらいいな」とか
「うつ伏せにしたときにしっかり起きられるようになったらいいな」
とかっていうのは、私も同じなんだけど、
それは遊びの中での子どもの探求心を信じるシェルハブメソッドと
作業療法士さんの方法の大きな違いかもしれない。
奈々絵:だから私はもっともっと早くみかささんと出会いたかった。
動きのレパートリーが広がるほど、自由
みかさ:シェルハブメソッドを知ったきっかけは?
奈々絵:きっかけは佐々木博美さんです。
「シェルハブ・メソッドのレッスンいいみたいよ」って紹介してくれて。
みかさ:博美さんはご自身がダウン症のある息子さんをおもちで、
息子さんはもうすでに37歳なんだけど、「だっこの会」っていうのをやっていて。
たくさんのダウン症の小さなお子さんを見てらっしゃるんですよね。
その中で、ダウン症の赤ちゃんだとよく、Tの字に開脚してそのまま
前に倒れる格好になるっていうのを見ていたんです。
でも私のレッスン受けてくれてる赤ちゃんが、
それをやらないで横座りしたりするんです。
奈々絵:そのエピソードですよね。Y、本当に横座りしたんです。
みかさ:Yちゃん、本当に綺麗に横座りやってますよね、今。
奈々絵:いまだにあの開脚の座り方やらないです。必ず横座りしてます。
みかさ:開脚して座るダウン症のお子さんが悪いわけじゃないんだけど。
彼ら自身の色んな探求の末、このまま開いていけるんじゃないかっていう
感じなんだよね、きっとね。
もっと楽に合理的にいくやり方を知らないっていうだけで。
奈々絵:みかささんから、横座りっていろんな体勢に動いていけるから
すごく大事っていうことも聞いて、なるほどと思ったんですよ。
でもそれはシェルハブメソッドだから教えてもらえたことで、
通院した先の作業療法士さんは教えてくれなかったです。
Yは、横座りからうつ伏せになるし、ムービースター(横向きに寝て、
ひじにもたれかかるように上体を起こした姿勢)から
体を起こして座るんですよ。横座りになるんです。
それを見た作業療法士さんから「素晴らしい」って言われました。
みかさ:そうですね。
シェルハブメソッドでは、いろいろな座り方があるって学ぶんですよね。
動きのレパートリーをたくさん持っていた方が自由だと考えるんです。
そして、いろいろな座り方ができるためには、筋肉を鍛えるんじゃなくて、
身体全部が協調して動くような動き方を見つけることだと考えています。
動き方を見つけるお手伝いをするんですよね。
奈々絵:座り方には本当にたくさんの種類があるっていうことも学んだんですけど、
何よりも、Yがやってみたいし興味がある。探求心ですよね。
上のお兄ちゃんに比べておとなしいなって思ってたんですよ。
シェルハブメソッドに出会ってなければ、
そのままおとなしい子として関わっていたかもしれない。
Yからの発信もあまり出てこなかったかもしれないって思ってます。
みかさ:なるほどねぇ。
活発「が」いいよね!
奈々絵:ダウン症をもつ子どもがおとなしい、手がかからないとよく言われるんだけど、
それは違うと思う。
みかさ:創設者のハバ・シェルハブがたくさんの赤ちゃんと出会っている中で、ママに
「この子はおとなしくて、天使みたいなんです。よく寝るし。」って言われると、
障害のあるなしは関係なく、ハバの中にはパッと赤信号がつくんだって。
子どもは本来、動くから。
奈々絵:わかる気がする。でも本当にそうですね。
やっぱり動き出したら動き出したで大変です(笑)。
あれやらかした、これやらかした、ってありますよ。
でも、それって普通の子育てでもあることだし。
そう思うと、これでいいんだなって。活発でいいんだって思います。
みかさ:活発「が」いいよね。
奈々絵:そうじゃなかったら本当になんだろう。
受け身じゃだめだと思うんですよね。それじゃ成長しないと私は思ってて。
Yの同級生やいろんな子を見てきたけど、
おとなしくて受け身で、そのまま大きくなる子もたくさんいるなっては思いますね。
みかさ:本当ですね。
奈々絵:「活発で、いろいろやらかす、好奇心旺盛な子がいい」って
後押ししてくれたのは本当に、シェルハブメソッドと佐々木博美さん。
ダウン症育児の土台を作ってくれている二人だと思ってます。
みかさ:特に博美さんのダウン症をもつ赤ちゃんについての経験は大きいですよね。
奈々絵:大きいし、そこにシェルハブメソッドの視点が入るとさらに素晴らしいです。
みかさ:ありがとうございます。
ここまでのレッスンを振り返って、シェルハブメソッドが
Yちゃんに与えた成果みたいなものを、一言で表すとしたらなんですかね。
奈々絵:「子供が成長する力を最大限まで引き出してくれるもの」だと思います。
持ってるものを潰さないでどんどん引き出して、
そこからどんどんいろんな花が咲いていく感じです。
みかさ:嬉しい。ありがとうございます。Yちゃんがその力を持ってるんだもんね。
奈々絵:そうなんですよ。それが一人一人違うと思うんですよね。
だからシェルハブメソッドは一人一人に合わせてるんですよね。
みかさ:そうそう。だから個別でやってるんです。
忘れられないのは、レッスンを始めたばかりの頃から、 奈々絵さんがぽんぽんむぎゅしてくれると、Yちゃんはちゃんと そこに集中する顔になる。
奈々絵:なりますね。
みかさ:やっぱりYちゃんが自分で感じて、入力することは入力して、って
やってるんだなあって。
レッスンで1週間の成長を発見してくれる
奈々絵:ダウン症育児をしていると、やっぱり他の子に比べるとゆっくりなんですよね。
例えば健常の子が1時間くらいで覚えることを、
ダウン症を持つ子たちは1週間とかってかかることもあるんですよね。
みかさ:そうですね。
奈々絵:私なんかは上の子達を育ててきたから余計にじれったく思って、
「もう、早くこうすればいいのに」って思うんですけど、
レッスンで週1回会うことによって、みかささんが
1週間前からの成長をちゃんと発見してくれるんですよね。
みかさ:1週間会わないと結構変わってるもんね。
奈々絵:でも親ってそれがわからないんですよ。
みかさ:毎日会ってるからね。
奈々絵:そうなんですよ。全然わかんないから、
前のレッスンからの1週間で結構じれったくなって。
最初のころは……レッスンが水曜日で、その前の月曜日と火曜日、
まだ変化がないな、みたいな感じで落ち込むっていうか。
でも水曜日のレッスンで、みかささんから
「先週よりこうなってるじゃん」とか「こういう力がついてるよ」って
教えられると、大丈夫だって思えるんですよね。
私自身がすごい、みかささんに支えてもらってたなって思うんですよね。
みかさ:それはすごく嬉しい。ありがとうございます。
奈々絵:そうするとまた子どもが可愛くなるんですよね。
みかさ:うん。可愛いよね(笑)。
奈々絵:可愛いんですよ。
赤ちゃんに対するリスペクト
みかさ:レッスンを始めようと思った動機というか、
最初のレッスンで聞いたときに、保育所に入るっていうことを1つ
大きなゴール地点として奈々絵さんは考えておられて、
その頃までの目標はなんて言ってたんだっけ?
奈々絵:移動とおすわり?
みかさ:が、できるようになるといいって言ってたんだよね。
その達成度でいうと何%くらい達成した感じなんでしょう?
奈々絵:いやもう120%ですよ。
みかさ:ありがとう(笑)。そうだよね。
奈々絵:だってもう伝い歩きするんです。
みかさ:ね。すごいよね。
奈々絵:本当に、1年前想像してたよりも成長してますよね。
そこまで本当に成長するのかなって実は疑ってました。
みかさ:シェルハブ・メソッドの場合、そこは約束できないんだよね。
ゴールに向かって頑張りましょう、ではなくて、
今の地点からの積み上げしかやらないから。
奈々絵:でも、それもよかったのかもしれないです。
結局リハビリに行くと「次はこれをさせましょう」「これが目標です」……
ってなると、やっぱり親って焦るんですよね。
みかさ:そうですよね。
奈々絵:わかるんですけどね、養育ってそうだから。
私自身やっぱり育児を楽しくしたかったから、焦っちゃうなっていう思いがあって。
みかさ:私が創始者のハバ・シェルハブ先生や、トレーナーのバーバラ先生に会ったとき、
一番この人たち、すごいって思ったのは、赤ちゃんに対するリスペクトです。
「まだできない人」じゃなくて、本当にただの1人の人間として、 今ここで頑張っているっていう見方。 「ずいぶん自分で発見するのね」って言って、もうすでに知ってることにも いちいちビックリして、「ワァオ! 素敵!」って。
赤ちゃんを1人の人間としてちゃんと見て、 いまやってる最中のことを認めるっていう態度とか。
お母さんとかにも、
「こういうことやっちゃダメ」「そんなことやってるのダメ」とか言わなくて、
「素敵な赤ちゃんね」「よくママはここまで育ててますよね」って。
そういう態度が私はとっても気持ち良かった。なんだろうな、人間的な感じ?
私たちシェルハブ・メソッドの指導者に、身をもって
赤ちゃんやご家族に対するリスペクトを教えてくれたと思います。
奈々絵:本当にそう思いました。
だから私はみかささんに週1で会うことが楽しみだったし、
最初のころはダウン症育児に落ち込んでた自分もいたけど、
途中からは本当に可愛くて、「こんな成長してるじゃん!」みたいな。
そしたら小児科の先生とかにも、私から「できない」って言わなくなったんです。
「1ヵ月どうでした?」って聞かれたら、 「先生、こんなことできるようになって!」って。 主治医はそういうとき「わぁすごい」「成長してるね!」って褒めてくれる人で。
それも救われたし、月1回のだっこの会に行くと、佐々木さんがまた 褒めてくれるんですよ。「1ヵ月でそんなことできるようになったの!」って。
育児をいろんな人に支えてもらいながら楽しむのも大事なんだなって。
自分で心地よい姿勢になれるように
みかさ:あとは、予想もしてなかった成果とかってなにかありますか?
奈々絵:体が強くなったと思いました。
みかさ:そう!
奈々絵:最初の頃、やっぱり動けないから、無気肺になりやすかったんですよ。
肺に痰が溜まりやすくて、入退院が必要だったんですけど、
シェルハブメソッドを始めて寝返りが自分でできるようになったり、
動けるようになったら、自分で痰を出せたりとか。
他の子に比べたらまだ弱いですけど、強くなったなって。
体を動かすことって大事なことなんだって思いますね。
みかさ:本当にそうです。やっぱり自分で体の使い方がわからないと整わない。
首のあたりの器官とか食道のあたりって、
いっぱい動いて姿勢が整うとよくなるっていうことがあるみたい。
奈々絵:寝てるときも寝返りをうてる、自分で無意識で体を動かせる。
小児科の先生に言われたのが、
「Yちゃんは自分で呼吸しやすいポジションをわかってきてる」
って言われて、なるほどなって。
苦しくなったら傾けるとか、そういうことができるようになってきてる。
そういう成果もあるんだなって。
みかさ:やっぱり思った通りに動けるっていうの、大事なんだね。
奈々絵:本当に大事ですよ。
あとは探求心を潰さないので、集団に入ったときに強いなって思いました。
保育所では家でやったことないことを、いっぱい経験してると思うんですよね。
こないだはペンを持ってなぐり書きとか、
お友達がスプーンとかフォークを使ってるのを見て、
自分からスプーンに手を伸ばしはじめたりとか。
みかさ:すごいすごい。
奈々絵:探求心を潰さずに育てられたっていうのが、集団に行ったときに
強みになるんだなって思いましたね。
みかさ:今、刺激がいっぱいね。
奈々絵:もうなんか、疲れたら寝る!(笑)
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