子どものからバレエを習い、2019年まで秋田のミュージカル劇団「わらび座」で役者兼ダンサーとして活動、和洋の踊りを通して体に向き合いつづけてきた金子梓紀(かねこ・あずき)さん。
後編の今回は、いま楽しんでいるところや悩み、「どんな人にオススメ?」などなど伺いました。
「聞く」レッスンについて
みかさ:レッスン中、私いろんな視点で話をしますけど。
「こう動いてください」「ここに気をつけてください」っていうのもあれば、「発達上、赤ちゃんこうですよ」とか、いろんな話をしてると思うんですけど……何か役に立ったアドバイスとかはありますか。終わった後のシェアリングとかでも。
金 子:毎回、言葉だけで、動いてほしい動きに導くわけじゃないですか。
それってすごく難しいと思うんだけど、いつも全然ストレスなく、違和感なく動けてるんですよね。 赤ちゃん知識とかは、実はわりと聞き流しちゃってるとこもあるんですけど……いつも聞きながら「そうなんだ、へえ!」とは思ってるんだけども。
みかさ:流して、流して(笑)。
金 子:レッスン中はものすごい集中して聞いてることが多いんですけどね。
いつも心地よく聞いていて、それに集中してる自分もよくわかって。
みかさ:ありがたいです。
レッスンの進め方は、もともとハバ・シェルハブが作っていて。ハバも、師匠であるフェルデンクライス博士のやり方を学んで、それで組み立ててます。 やっぱりフェルデンクライス博士が飛び抜けた天才だったんだろうな、とは思うんだよね。お手本を見せて、「はい皆さんこうやって」「右手あげて」とか、形から見せてやる指導の方法がほとんどの中、見本を見せずに、自分で自分の体の感覚を信じながら、そこを探っていくような進め方。そこは私も学びながら今、進めてるところではあります。
不自由な体を楽しみながら
みかさ:ちょっと参考にさせていただけたら嬉しいんですけど……私の強みって何ですか。
金 子:みかささんの強みか……みかささんの強み。なんだろうな。人間力?
みかさ:なにそれ!?
金 子:「あ、信用して大丈夫な人だな」って最初から思わせられる力。
「多分この人は悪い人じゃない」っていうのがすごくよくわかったから、たぶん、私もすーっと入ってきたと思うんですけど。 日常的に赤ちゃんと接してるというのもあるかな。赤ちゃんも子どもも、すごいよく見てるから……なんか、駄目な人には拒否反応がすごいじゃないですか。
みかさ:すごい。
金 子:赤ちゃんとか子どもも、信用できる人っていうのはすごい大きいんだろうなって。
みかさ:そうなれるように頑張ります! ありがとうございます。
金 子:なってると思いますよ。
みかさ:なんかね、赤ちゃんにいろいろ、美辞麗句を言っても通じないので……(笑)、
正直に当たるしかないなっていうのが。
金 子:確かに。
みかさ:だからなるべく正直でいようと思ってるのがいいのかもしれないです。
ここまで受けていただいて、しかもご出産を間近に控えているじゃないですか。でも自分の体の感覚が、7割がた、いい感じになってきてる……っていう今、次のステップでどうなりたい、とか思っていることありますか。
金 子:そうですね、どうなったらいいんだろうな。それが課題でもあったり……
今ここまでやってきて、変な話これからね、今まで自分が体験してきたものを……何も考えず行動する子が出てくるわけじゃないですか。お腹から。
みかさ:うん。世の中に出てくるね。
金 子:その子とこれから一緒にやっていくにあたって、今までやってきたこと、私は
活かせるのかな、なんて思いながら。
みかさ:そこはお手伝いさせてください。そこを!
金 子:そうですね、そうですね。それはそうだ。お任せしてもいいんだ。
みかさ:お任せじゃなくて、一緒にやろ。
金 子:お手伝いをいただけばいいですね、そこはね。
みかさ:そこはもう本当、いくらでもっていうか、ぜひ。
子育ての中でね、本当に、まさしく「あの動き、本当にやってる!」っていうのがあると思う。そして今受けていただいてるのは、あずきちゃん自身は動ける体で受けていただいてるじゃないですか。
金 子:うん。
みかさ:なんだったら人より筋肉があり、人よりよく動き……プロフェッショナルで、
人より体の意識も十分できている中でレッスンを受けていただいてる。けど、生まれてすぐの赤ちゃんって重力に負けてるんですよ。 まだ筋肉もない、重力に負けてる赤ちゃんが、その状態で合理的に「どうやったら動くんだろう」って試行錯誤している姿が、多分ここまで学んできた梓紀ちゃんには見えてくると思うんです。 具体的にどうしたらいいだろうっていうのは、もう、ぜひ! お手伝いさせてください。でもこのレッスンも、役に立ててもらえるじゃないかなと思ってます。
今レッスンを受けてて、悩みとかはありますか。
金 子:動きづらくなって……お腹が大きくなってきてっていうのもあるし、体重も今、
人生フルマックスぐらいなので。
みかさ:そうだよね。四つん這いとかやっぱり大変。
金 子:レッスンも、やっぱり動きが激しくなってきたじゃないですか。成長に伴って。
みかさ:成長に伴ってね。四つん這いまできたからね。
金 子:そうそう。それが体の変化も伴って、大変……つらいじゃない「大変」。
不自由さもあったりとか、「これ、多分、何もなかったらすんなりできるんだよね、この動き」とか。最近のレッスンははそんなことを感じながらになってきて、でも、そういう不自由な自分も新鮮だったりして。
みかさ:うん。
金 子:この不自由の中、どうやったら続けたらいけるかな、っていうのは考えてます。
みかさ:ほんとに無理しないで、途中で産まれないようにねって思いながらやってるけど、
体験的に言えば……もちろん人によって違うけど、私がシェルハブ・メソッドの指導者講習会を受けたとき、お腹が大きかった人が3、4人いたんだよね。でも皆さん、ずっとこのレッスンやれていたから。あまり激しい動きはしないでねっていうのはあるかもしれないけど、加減もできるし、勢いつけて危険なことをやることはゼロだし。
金 子:うん、うん。
みかさ:まあまあ大丈夫だな、って思えるところまで、ぜひ続けてみてください。
金 子:うん。そのつもりではおりました。この不自由さを楽しみながら。
みかさ:やってください、ぜひ。
「自分の体が楽しくなってます」
みかさ:これ、人に勧めていただけるレッスンでしょうかね?
金 子:私、一番最初に体験やったときに、やっぱり「わらび座」の子に勧めたんですよ。
舞台やるにあたっても、なかなか自分の体を考えながら生活するなんてないから。 ちょっと意識しただけで動きやすくなったり、ちょっと考え方、使い方を変えただけで楽になる動きもたくさんある……ってよくわかったから。 自分の身一つで、核心的なものがすごく変わる。私は体を動かす人がまわりに多かったから、やっぱりそういう人に勧めたいな、やってみたらいいのになって。
みかさ:私も思います。もっと舞台の人、自分の体を細かく見れるとすごく便利なのにな
って。健康骨の辺りがもっと自由であると固く見えないのにな、キャラクターを作れるのにな、とか。
金 子:そうなんですよね。
みかさ:このレッスン、人に勧めるとき伝えにくくて、いつも困るんだけど……
一番「これは他のものとはちょっと違う」というところは何でしょう?
金 子:そうなんですよ、ちょっと伝えにくいんですよね。私もすごく難しくて……
感覚とか脳を使うとか、目に見えないことだし、人によって受けとり方も全然違ったりするじゃないですか。その人によって全然違う感覚じゃないですか。私はとても良かったけど、「よくわからなかったな」ってこともあるだろうし…… でもこれも、使ってないと失われる感覚であって、1回じゃ確かに難しいんだけど、連続してやってみたとき初めてわかることがあるんだよなって思ったんですよね。長くやって蓄積されてるからこそ使える、神経伝達とか筋肉だったりとか、そういうものが大きい。 すごく体の感覚が鋭い人とか、すごくマッチした人は、1回2回で大きな発見があるのかもしれないけど……なんて言ったらいいんだろうなあ。
みかさ:確かにそこなんですよ。オンラインになる前は、月に1回とかでレッスンしていた
の。皆さん、毎回来られるともかぎらないし、間も空くし……それだと蓄積しない感じがすごかったの。 私は指導者講習会で10日間、毎日毎日これをやって、その10日間で自分が変わる感覚っていうのが得られたんだけど、これ蓄積しないと難しいんだろうなと思ったので、ちょっと長いけど、毎週1回にして全部やろうって思ったんですよね。そこは大事なポイントだったかもしれない。1回2回で変わるわけはない。だって神経系の新しいルートを作ろうとしてるんだから。
金 子:うん、うん。
みかさ:なるほど。私も発見しました! ありがとうございます。
このレッスン、さっき舞台やってる人とか、体動かしてる人にぜひすすめたいっておっしゃっていただいたけど、向かない……この人、こういう人たちはやめた方がいいよっていう人、どんな人にはおすすめしない?
金 子:なんだろうな……筋トレが命と思ってる人?(笑)
みかさ:(笑)。私も筋トレ好きですけど!
金 子:私も好きなんですけどね。嫌いじゃないんですけど……
筋肉を鍛えることだけに集中してる人だと、たぶん物足りなさすぎるかなって。
みかさ:意味がわからないかもね。
金 子:うん。でもこのレッスンした上で筋トレしたら、いい効果になると思うんです。
みかさ:絶対そうだと思う。だって、なんていうんだろう。1か所いじめようと思ってやる
のと、全身を連動させて、こことここを協力し合わせながら、骨盤を使いながら上腕二頭筋を鍛えよう、っていうのとはちょっと違うよね、やっぱり。 ありがとうございます。ちょっと長くなっちゃって……本当に楽しい話だったんですけど、最後に「これは言っておきたい」みたいなのがありましたら。
金 子:「自分の体が楽しくなるな」っていう感じはします。
みかさ:ありがとうございます!
金 子:自分の体と向き合うのが楽しくなる。楽しくなってます、私も。
みかさ:嬉しいです、本当に。ありがとうございます。
産まれるのも楽しみですけど。そこまでの不自由な感じも楽しみつつ。
金 子:はーい。
みかさ:あと生まれてからがあなた、ちょっと大変だから。言ってください遠慮なく、
「困りました」とか! 宮城県の母と思って。
金 子:本当にそうですよ。そう言っていただける人がいるのは心強いです。
みかさ:今日は本当にありがとうございました。楽しかったです。では、また!
金 子:はい、ありがとうございます。こちらこそ!
みかさ:失礼しまーす。
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