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主体性の幸福(2)赤ちゃんの主体性とは?運動主体感

  • 執筆者の写真: 太郎 西邑
    太郎 西邑
  • 2023年6月17日
  • 読了時間: 4分

スタッフによる連載コラム「主体性の幸福」をお届けします。

前回の記事はコチラから。


赤ちゃんが「自分で決めて、自分でできること」

それは「体を動かすこと」

「自分でいごこちのいい姿勢になること」

というのが、前回の終わりでした。



赤ちゃんの体を動かして

姿勢を変えてあげることは、大人にもできます。

ですが、


①「今、どんな姿勢がいごこちいいか」

 って究極、本人にしか分からないことです。

 それは赤ちゃんも同じですよね。


そして、


② 自分で動くことでしか得られない感覚は

 大人が赤ちゃんのかわりに「感じてあげる」

 「慣れあげる」ってことは、できません。



自分で動くことでしか得られない感覚。

その1つに「運動主体感」という感覚があります。


大人に体を動かしてもらうんじゃなく

自分で動くと

「いま私、自分で動いたな」

と感じます。


・・・え、当然じゃん!

と思うかもしれませんが、実はそうでもないんです。



「自分で動いた」

「私が動こうとしたから、動いた」

という運動主体感を感じるのは、


・脳から体に「こう動いてね」と指令が出て

・体が動いて、

・体から脳に「こんなふうに動きました」と報告が戻り、

・脳が「なるほどこうなったか」と確認する


こんな情報のやり取りの結果なんです。


(参考・嶋田総太郎「脳のなかの自己と他者: 身体性・社会性の認知脳科学と哲学」)



「脳と体」だとわかりにくい方は、

テレビゲームの「スマブラ」とかをご想像ください。


コントローラーを操作するとキャラクターが動く。

画面を見て(視覚からのフィードバック)、

キャラクターが操作通りスムーズに動いてれば

「自分が動かしてる」

と感じます。


ちなみに私はゲームに慣れてなくて、

いとこたちとスマブラをプレイする時はいつも

間違ったボタンを連打しながら

「違う!反対に走って!ジャンプしなくていいー」

と、場外になってました。

この状態では「自分で動かせてる」とはもちろんまったく思えません。



「自分の体を動かそうとして、動かせる」

そう思えるのは、いつ頃なんでしょうか?

じつは、すでに胎児のころから

運動主体感は発生していると考えられます。


こんな研究があります。

12~35週ころの胎児は、手を口に運ぶ運動をくり返します。

これは長い間「偶然の動き」だと思われていましたが、

19~35週になると、手を口に持っていく前に、口を開けるようになります。

指をしゃぶれるようになるんです。


これって、実はすごいこと。


「手がたまたま口の近くに行った」じゃなくて、

「たまたま口が開いただけ」じゃなくて、


「こういうふうに動くと、手が口の近くにいく」

ってわかっている。

だから、指をしゃぶるために

前もって「口を開ける」という準備動作をする。



ということは、自分の運動を「予測」できる力が、

胎児のころに、すでにある!ということ。


もちろん、まだできないことは沢山あって、

スマブラでいえば「必殺技を出す」とか

「連続コンボを決める」とかはできないかも。


でも、もうコントローラーは持ってる。

脳は「こう動いてね」と、

結果を予測しながら指令を出している。

「こうなりました」って感覚もフィードバックしている。


ということは、その結果生まれる

「自分で動いた」という感覚、運動主体感も

赤ちゃんは感じはじめているはずです。


(参考:田中友香理「乳児期の運動主体感の発達過程とその社会的機能」)



つまり生まれたての赤ちゃんも

「自分で動いたのか、他者に動かされたのか」

の区別ははっきりできているし、


「自分で体を動かそうとして、動かせた」

って経験をしているのです。


大人とは違う感じ方かもしれませんが、


「自分でできた!」

「やってみて、成功した!」


という感覚、達成感、嬉しいような気持ち、などを

すでに感じているのだと考えられるのです。



世界と「初めまして」自分の体と「初めまして」

・・・という時期の、赤ちゃん。


人生の入り口で、たくさんの「できた!」を体験して

「もっとやってみよう!」と感じられたら。。


それは、生きていく上で土台になるような

とてもハッピーなことなんじゃないか。

そんなふうに思います。



赤ちゃんの主体性とは「自分で動けること」

そして、そこから得られる感覚や学びは

意外と複雑で深いこと。


さらにさらに「ちょっと素敵なんじゃないか」

・・・ということ。


イメージが深まったら嬉しいです。


~~次回につづく~〜




※以下は補足情報です。

(読み飛ばしていただいても大丈夫です)


運動主体感は、脳の中で発生する認識。

人間にとってとても意味のあるものですが

ある意味では「おまけ」なんです。


本命は、フィードバックを受けての「修正」。

もっと「いい感じ」に動けるように改善すること。


「こんな運動指令を出したら、うまくいかなかった」

「報告が〝ダメでした〟だけだった」

「次はやり方を変えてみようか……」


指令、動く、フィードバック、修正。

うまくいった!となったら、くり返しやってみる。


このシステムが大活躍するのは、たぶん、

スポーツなどで新しい動きをする時とか

電動義手などを初めて使う時とか。


そして、生まれたての時期、だと思います。


テレビゲームの例でいえば赤ちゃんは

「スマブラ初心者」。


とにかくボタンを押してみる。そして反応を見る。

別のボタンを押してみる。今度は何が起こる?

面白かったら、連打してみる。

同時に押したら、今までと違うことが起きる。

お、こんなところに新たなボタンが!

えっ、今なんかすごい技出た!


赤ちゃんが床の上でモゾモゾしてる時間は

そんな試行錯誤と大発見でいっぱいの

楽しい時間なんです。

 
 
 

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