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  • 執筆者の写真太郎 西邑

シェルハブ・メソッドが生まれたところ

突然ですが 「モーシェ・フェルデンクライスさん」 という方を、ちょっぴりご紹介させてください


(結構、はしょります。調べれば調べるほど興味がわく人です…)


というのも、フェルデンクライスさんは

「フェルデンクライスメソッド」

と呼ばれる動きのレッスンを開発した人なのですが


これは、シェルハブ・メソッドの"先輩"のような存在。

考え方や方法をたくさん受け継いでいるのです。


シェルハブ・メソッドの考え方や方法は、


・赤ちゃんは自分で試行錯誤しながら動きを学んでいる

・そのお手伝いのために「ぽんぽん、むぎゅう」と体を触ってあげる

・赤ちゃんの動きを学ぶために、大人自身が動いてみる


などなど、ちょっと「変わってる?」と感じるかも、

「なんで?」と思うかもしれないところがありますが


フェルデンクライスメソッドがどうやって生まれたのか?と調べていくと

私も「なるほど、そういうことなのかー」と思う部分があったので 機会があればお伝えしたいなあと思ってたのです。


  * * *


フェルデンクライスさんは物理学博士で

1904年にウクライナ(当時ロシア領)で生まれた、ユダヤ系の方。


「博士」と聞いてパッと浮かぶイメージと違って

どんどん進学して、研究室にこもって……という人ではありませんでした。


少年時代には、生活のためにサーカスの巡業に参加しながら、旅をしたり。

移民先で身を守るために、護身術を編み出して、仲間に教えたり。

それをきっかけに、柔道に打ち込んだり。

博士号を取るための費用は、物理学者仲間に柔道を教えて資金調達したそうです。


科学を学び研究することと、体を動かすことと、

どちらにも同じくらい興味を持ちつづけた人だったようです。



フェルデンさんは20代の時、サッカーの試合で膝をケガして

歩くのが不自由になっていました(やっぱりスポーツが好き)。


30代になる頃には悪化して、痛すぎてベッドから立ち上がれないまま、数週間が過ぎることも。


やっと有名な外科医に診てもらったころには

「難しい手術が必要だし、たとえ成功しても、膝は曲げられなくなるだろう」

という状態になっていました。


「それなら、手術は受けません」。

ここからフェルデンさんの実験と研究がはじまります。

目標は、また楽に歩けるようになること!



たとえば「どう動いたら膝が痛まないか」と

ベッドに横になって、膝をゆっくり動かす実験をしました。


横になって、何時間も、

「どんな動きで痛むのか、痛くない限界はどこか、

どうしたらその動きを避けられるか……」と、試していたそうです。


ちなみに横になるのは、重力の影響を受けない状態で膝の動きを観察するため。

こういうところが実験慣れした研究者っぽいですね。


膝の調子が「いい日」「悪い日」を比較する中で、神経学の文献を読み、

脳と体がお互いに大きな影響を与え合うことも知ります。


そして神経学、解剖学、生体力学、さらに人間の発達や学習について……

などなど、関係のある分野を猛勉強。


もちろん物理学の考え方や、柔道の動きをもとに考えると……など

これまで学んだこと、体験したことも総動員。



フェルデンさんが考えていたのは「膝そのものを治す」ことではありませんでした。


「膝を悪化させない、無理のない動き方があるはずだ」

「脳と神経に、その動き方を学んでもらう。そうすれば、もう一度歩けるはずだ」

そう考えてたのです。


なんでそんなことを考えたのかというと、

「ふつうの哺乳類は生まれてすぐ歩けるのに、人間は立って歩けるようになるまで、時間がかかる」から。


つまり「歩く」のは自動的にできるわけではなくて、

経験を通して「学習する」ものなのでは?


そして、いま自分の脳が「学習」している歩き方は

膝が痛くなかったときのもの。

無意識にその歩き方になるから、膝がどんどん悪化しちゃう。


それなら、習慣を変えれば、脳が新しい歩き方を発見すれば……。


このアイディアが大正解で(すごい)、

フェルデン博士は2年ほど後には、膝を痛ませずに歩けるようになったのでした。



その後、この体験を「歩けた! よかった!」で終わらせずに

「体を動かすことを通して、脳や神経に新しいことを学んでもらう方法」

として、ほかの人にも役に立つ、応用できるレッスンの形にもっていったのが

フェルデンクライスメソッドです。

こういうふうに動いてみましょう、という具体的なレッスンがあるだけじゃなく、


「くり返し動かす部位、細かく動かす部位ほど、脳の中の担当領域が広がる」

「刺激が小さいほど、細かな違いを感覚できる」

「ゆっくりと動くほど気づけることが多い」

「無理をしているとき、学習は起こらない」

「間違いを避けようとしてはいけない。正しい方法などない」


・・・といった、理論的な部分も含みます。


(参考)

『脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線』ノーマン・ドイジ、高橋洋(2016年)

モーシェ・フェルデンクライス https://www.bookclubkai.jp/portfolio/people45/

フェルデンクライスの誕生と歴史 https://feldenkrais.jp/about/history.html



本当は、まだまだ先があるのですが・・・

(脳と運動と学習の関係は、とても面白いです)

ちょっと長くなってしまいました。


シェルハブメソッドの考え方や理論や方法は

こんなふうに生まれたフェルデンクライスから、

たくさんのことを受け継いでいます。


ちょっと触れられなかったのですが、、

子どもの運動の発達は「試行錯誤によって、各人各様のあり方で学習する」ものだよ

という見解が登場したのは、1994年にエスター・セレン博士の研究なのですが


フェルデンクライスさんが

「子どもは寝返り、ハイハイ、歩くことなどを、

たまたま起こった動きから発見して、実験をくり返して学習しているはず」

と、論じたのは、その数年前だったそうです。


ちなみに、シェルハブ・メソッドを開発したハバ・シェルハブ博士は

運動の発達や学習について研究を続け、

フェルデンクライス博士と一緒に、世界各地を回ってレッスンをした人です。

(1989年に「脳性まひのある子どもにフェルデンクライスを用いる(Working with Brain Damaged Children Using the Feldenkrais Method)」という論文を書いています)



シェルハブ・メソッドのレッスンでは、

「ぽんぽんむぎゅう」というタッチを通して

赤ちゃんが「自分の体に気づいて」「自分で動かしてみて」

そして「自分で新しい動きを発見する」ことを促しますが


フェルデンクライスのグループレッスンでは、タッチのかわりに言葉を使います。

(1対1のレッスンではタッチを使います)


お手本を見るんではなく、

「ここをこんなふうに動かしてみて」

「体のここに注意を向けてみて」

という声だけを聞きながら動く、というのが特徴です。



ふう、何だかものすごく長くなってしまいましたが、少しでも

「なんだか面白いなあ!」

というワクワクを共有できていたら嬉しいです。

またいつか「その後どうなったの?」なんてお話もできたら嬉しいです。

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